遠州みみの里 チャリティーコンサート 鈴木重子&大島花子"ふくみみ"

11/15 アクト中ホールにて重子さんのチャリティーコンサートが開催されます。
重子さんからのメッセージを転送します。



今年の初めのある日、
私は片耳の聴力を突然、失いました。

冬の間じゅう、忙しく日本とアメリカを行き来して
仕事も続いて、疲れていたことや、
飛行機の旅で気圧が変わったことなど、
思い当たる理由は、いくつかありますが
本当の原因は、今もわかりません。

友人と話していたら、急にキーン大きな耳鳴りがして
友人の声が聴こえなくなりました。
どうしたことかとびっくりしているうちに、
耳鳴りさえも聴こえなくなって、
私の音世界の半分が突然、消えてなくなってしまったのです。
ほんの数分の出来事でした。

聴こえなくなって、最初の1週間、
私は、大きなショックと恐怖に襲われました。
片耳が聴こえない、ということは
本当に大変なことでした。

何かの音がしていても、
それがどちらの方向から聴こえてくるかが
わかりません。
人でいっぱいのレストランでは、
相手の話し声を聴き分けることが
できません。
少し大きな音がすると、
耳に大きな負担がかかって、
心身が消耗してしまいます。

耳が聴こえないこと以外は、
他に症状がないのに、
私は疲れ切って、
毎日何時間も、何時間も眠りました。
初めての場所に、急に投げ出された犬のように、
どこにいても怯えた気持ちになりました。
音楽家である私にとって、
音を聴き取ることは、
世界と関わりを持つために、
本当に大きな手段だったのだと思います。

病院に行っても、
はっきりした原因も治療法もみつかりませんでした。
西洋医学でできることがなくても、
まずは、自分の使い方を大切にしようと
アレクサンダーを使って動き
休息を充分に取っているうちに、
ありがたいことに、聴力は、少しずつ、戻ってきました。
でも、そこからがまた、大変だったのです。

右と左の聴力の音域、範囲が違うために、
音楽は二重に聴こえるようになりました。
ある音程は急に、耳に刺さるように大きく
(補充現象といいます。)
ある音程は、ほとんど聴こえなかったり、
歪んだりしていると、
音楽は、意味のよくわからない
音のかたまりになってしまいます。

このままずっと、音楽が聴こえなかったらどうしよう?
私はまた、歌えるようになるんだろうか?

不安の中で私は、毎日、毎日、
少しずつ、色々な音に耳を傾けました。
いちばん聴きやすかったのは、自然の音でした。
木々を通り抜ける、風のざわめき、
小さな川の水音、屋根に当たる雨の音、
鳥の鳴き声。

楽器の音も、聴きました。
まだひずんで聴こえるピアノの音も、
眼をつむって、耳に入ってくるままに。
大きな木の枠と、長い金属の弦と、
フェルトのついたハンマーが響き合ってつくる、
複雑で立体的な、音の連なり。

こんなに一心に音を聴いたことは
これまで、ありませんでした。
私の周りに、音は当たり前に溢れていて
いつでも、聞き取れるものだったから。

『聴こえる』ということは、
なんてすごいことだろう。
世界はなんて美しく、
豊かな変化に満ちあふれたところだろう。
私は、どれほどのものを、
そこから受け取っていたことだろう。

9ヶ月ほど経った今、
私の聴力は、充分に休息していれば、
ほぼ元どおり聴こえるほど回復しました。
うたも歌えるようになりました。
回復した、というより、
私は新しい音の世界に生まれ直した、
と言ったほうがいいかもしれません。
私が世界を受け取るやり方は、
それほど、以前と違う、精気や力強さを
持つようになったのです。

今月の半ば、私は浜松の『みみの里』を訪れました。
『みみの里』は、聴覚障がいをもつ方のための、就労支援施設。
来月は、そのサポートのための、
チャリティ・コンサートで歌うのです。
当日は、施設のみなさんもいらして、
手話でうたを披露してくださる予定です。

このお話をいただいて、私は
自分の経験を、再び思い返し、深く考えました。
音が聴こえない、ということが
いったい、何を意味しうるのか。
(私は片耳だけだったけれど、
『みみの里』の方々の多くは、両耳がきこえません。)
彼らの世界は、どんな世界なのか。
どんなことが、本当に役に立つのか。
とにかく、会ってみよう、そのひとたちに。

ドアをくぐったとき、
みんなはちょうど、コンサートで『歌う』うたの練習中でした。
耳には聴こえない音楽と一緒に
手話の振りを合わせている後ろ姿は
本当に一心不乱。

「歌手の『すずきしげこ』さんが、来てくださいました!」
手話で紹介していただいて、みんなの前に立った途端、
私は、なんともいえない、あたたかな空気に包まれました。
いくえにも重なった、やわらかなブランケットに
くるまれたような。

あの優しさと純粋さの質を、
何と言葉で表していいのか、
私にはわかりません。
それぞれのひとは、みんな、
うれしそうだったり、少し緊張したり、
親しく話しかけてくれたり、
ただ、自分らしくしているだけなのだけど、
そばにいて、私はなぜか、
いろいろなことを思い出しました。

ひとの幸せって、なんだろう?
生きているって、どういうことなんだろう?
ひとがひとの近くにいるということは、
どれほど安心なことだろう?

そして、ああ、と思ったのです。

片耳の聴力を失って9ヶ月の、私の経験。
それがどれほど、世界への生き生きしたつながりを
生んだかということを考えたら、
このひとたちが、聴こえなくなってから今までの間に
どれほどの強さと、優しさと、生気を培ったのかは
想像してあまりある。

私は、何かの助けになればと思って
『みみの里』に出かけたのです。
でも、助けられたのは、全くもって
私のほうでした。

音の聴こえない『みみの里』のみなさんは
私たちには聴こえにくい『いのちの音』を
聴き分ける『ふくみみ』を持っている。
それは、いまのこの世界のなかで
本当に得がたい、美しい宝物だと
私は思うのです。

来月のコンサートでは、
亡き父、坂本九さんの志を継いで、
手話を通じて歌を届けておられる
大島花子さんとともに、
美しいメロディの底に流れる
『いのちのうた』に耳を傾ける時間を
ご一緒できたらと願っています。

どうぞ、お越しください。

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浜松リバティライオンズクラブ 35周年記念事業
遠州みみの里 チャリティーコンサート 鈴木重子&大島花子"ふくみみ"
11/15(日) 開場13:00 開演13:30
アクトシティ浜松 中ホール(JR浜松駅徒歩5分)
前売 3,500円 当日 4,000円 (7/1発売予定)
主催:浜松リバティライオンズクラブ  
Tel/Fax:053-454-5946(12:00-17:00)
共催:聴覚・ろう重複障害者作業所 遠州みみの里 とあゆむ会 
Fax:053-478-3339
後援:浜松市教育委員会、中日新聞東海本社、静岡新聞社・静岡放送
<< チケット >> 浜松リバティライオンズクラブ、遠州みみの里とあゆむ会、平良内科(瓜内町)、アクトシティ浜松(B1F)チケットセンター、他
遠州みみの里コンサートブログ http://miminosato.hamazo.tv/
いのちの響きを紡ぐ歌い手、鈴木重子さん。
亡き父、坂本九さんの志を受け継ぐ、大島花子さん。
お二人の美しい歌声と、癒されるハーモニー。
にぎやかカラフルな「みみの里」の手話とご一緒に!
<<出演>>
鈴木重子(歌) http://www.shigeko.jp/
大島花子(歌) http://hanakooshima.com/
笹子重治(ギター) http://sasa-g.com/
渡辺亮(打楽器) http://www.ryo-watanabe.com/
黒川紗恵子(クラリネット) http://www.kurokawasaeko.com/

遠州みみの里コンサート 「鈴木重子&大島花子」
MIMINOSATO.HAMAZO.TV


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